HbA1cが高い

HbA1cとは

HbA1c(ヘモグロビン・エー・ワン・シー)は、過去1〜2ヶ月の平均血糖値を反映する指標です。これは赤血球中のヘモグロビンがブドウ糖と結合してできる化合物の割合を測定することにより、血糖管理の状態を評価するために用いられます。特に糖尿病の診断と治療のモニタリングにおいて重要な役割を果たします。

血糖値とどう違うのか

血糖値はその瞬間の血中グルコース濃度を示すため、食事や運動、ストレスなどによって日々変動します。一方、HbA1cは長期間の平均的な血糖コントロール状態を示すため、一時的な変動の影響を受けにくいです。

HbA1cの正常値

HbA1cの正常値は、一般的に5.6%未満とされています。日本糖尿病学会の基準では、6.0~6.4%で「糖尿病の可能性が否定できない」、6.5%以上で「糖尿病が強く疑われる」、と定義されています。糖尿病と診断されている患者さんは、合併症の進行を抑えるためにHbA1c値7.0%未満を目標に治療を行います。

HbA1c値が高いと疑われる糖尿病とその概要

HbA1c値が高いと、一体どうなるのでしょうか?

HbA1cの値が高いと、過去1〜2ヶ月の血糖値が持続して高い状態である、と考えられます。血糖値が高い状態が続くと全身の臓器や血管に障害を与え、心血管疾患、神経障害、腎障害、視力障害など、健康に重大な影響を与える可能性があります。

糖尿病とは?

糖尿病は、体内でのインスリンの作用が不十分であることにより、血糖値が異常に高くなる代謝性疾患です。インスリンは膵臓で生成されるホルモンで、体内でのグルコース(糖)の利用や貯蔵を調節する役割を持っています。糖尿病には主に1型と2型の糖尿病があります。1型糖尿病は自己免疫反応により膵臓のインスリン産生細胞が破壊され、インスリンをほとんどまたは全く生産できなくなる状態です。主に若年層で見られ、インスリン注射が必要です。2型糖尿病は体のインスリンに対する抵抗性が高まることや、インスリン分泌の減少が原因で起こります。生活習慣の改善、食事療法、運動療法、薬物療法で管理されることが多いです。成人に多く見られるタイプです。

糖尿病の症状

糖尿病の初期は、自覚症状がほとんどない場合も多く、健康診断などで指摘されて初めて見つかることも多いです。糖尿病が気づかれないまま高血糖の状態が続くと、過度の渇き、頻繁な尿意、疲労感、視力の問題、時には急激な体重減少などがあります。未治療の糖尿病は、心血管疾患、腎疾患、視覚障害、神経損傷など、多岐にわたる重篤な健康問題を引き起こす可能性があります。

糖尿病の治療方法

食事療法

糖尿病の食事療法は、血糖値の管理と全体的な健康維持を目的としています。適切な食事は、血糖の急激な上昇を防ぎ、長期的には心血管疾患のリスクを減少させることができます。基本的な指針は以下の通りです: 炭水化物の管理: 炭水化物の摂取量を調整し、食事のタイミングと量を一定に保つことで、血糖値の急激な上昇を避けます。全粒穀物、野菜、果物などの健康的な炭水化物を選びます。

  • ・食物繊維の摂取: 食物繊維は血糖値の急上昇を防ぐのに役立ちます。豆類、野菜、果物、全粒穀物を積極的に取り入れることが推奨されます。

・健康的な脂質: オメガ3脂肪酸を多く含む魚や、オリーブオイル、ナッツ類などの健康的な脂質の摂取が勧められます。

・適度なタンパク質: 肉の選択に注意し、魚、鶏肉、豆類などの健康的なタンパク質源を選びます。

・飲料の選択: 砂糖入りの飲料は避け、水やハーブティーなどの無糖の飲料を選びます。

食事の計画には、栄養士や糖尿病教育者と協力して個人のニーズに合わせた計画を立てることが大切です。

運動療法

運動は糖尿病の管理において非常に重要な役割を果たします。定期的な運動は、インスリンの感受性を改善し、血糖値を自然に下げる助けになります。運動計画には以下のポイントが含まれます:

・定期的な活動: 週に最低150分の中程度の強度の有酸素運動(早歩き、水泳、サイクリングなど)を目標とします。

・筋力トレーニング: 週に2回以上の筋力トレーニングを行い、全身の筋肉を強化します。

・生活に組み込む: 日常生活に運動を組み込むために、階段の使用や通勤時の一駅分歩行なども良い選択です。

・段階的に増加: 運動は徐々に強度や時間を増やしていくことが重要です。

急激に運動強度を上げると低血糖を引き起こすリスクがあります。 運動を始める前には医師に相談し、特に心血管疾患のリスクがある場合は適切な指示を受けることが重要です。また、運動による血糖値の変動を観察するために、運動前後の血糖測定を行うことも推奨されています。これにより、安全に運動を続けることができ、糖尿病の管理に役立てることができます。

HbA1c値が高いと合併症の危険性があります

HbA1c値が高い場合、糖尿病による神経障害、腎障害、心血管疾患などのリスクが顕著に増加します。これらの合併症は生活の質を大幅に低下させるだけでなく、早期死亡のリスクも高めるため、積極的な血糖管理が必要です。

HbA1c値が高いことで考えられる他の疾患

HbA1c値が高い場合、糖尿病以外にも甲状腺機能亢進症や膵炎など、他の健康問題を引き起こす可能性があります。これらの状態もまた、血糖値に影響を与え、糖尿病の管理を複雑にする可能性があるため、医師による定期的なチェックが推奨されます。